第1章: ニューロテクノロジーの未来
21世紀、ニューロテクノロジーは世界規模の革命を迎えた。テクノロジーで高められた感覚や、 強化された記憶能力、苦痛調節などがない生活は、もはや想像できない。神経系をコンピュー ターチップに接続することで複雑なスキルを数秒で習得でき、切断すると同時に忘れることが できるようにもなった。しかし、こうした技術をどんどん日常生活に取り入れるようになって80 年近くが経った今、私たちは自身に問いかけなくてはならない。次は何だろうか、と。
近年、学者たちは脳の可塑性を操作する新たな方法についての議論を再燃させた。コプロセッサを用いて恒久的な神経経路を作ることができるか? 私たちの生涯のうちに、ドーパミン作用 によるデータ操作に関する大発見はあるだろうか? もしそうなら、どのような影響を与えること になるのか? 採算的に成り立つ人工神経伝達物質が登場すれば、間違いなく健康科学の分野 に改革をもたらすことになるが、同時にほとんどの政府と企業に破壊的な兵器をもたらすこと にもなる。可塑性操作の分野はまだ初期段階にあるが、ほとんどの専門家は神経のつなぎ直し が現在普及しているサイバネティックインプラント同様、一般化する未来に備えるべきだとい う考えで一致している。この技術を最大限に利用するために、いかに私たちの体を科学的に適 合させられるか、また技術の悪用と起こりうる副作用を最小限に抑える方法について、早急に 研究を開始すべきだろう。